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  • 執筆者の写真Bucho

不動産購入編:業界変革の序章|福岡の不動産会社の営業日報的ブログ



こんにちは、buchoです。


せっかくの日曜日と言うのに、今日の福岡エリアは雨模様。そんななかでも、弊社スタッフは売却および購入相談をいただき、各地を飛び回っています。種々お引き合いを賜り、まことにありがとうございます。


さて、今日のblogテーマは購入編。仲介手数料について触れたいと思います。


不動産大手ポータルサイトSUUMOは、2023年4月1日より、これまでNGとしていた、物件販売情報のページに仲介手数料【無料】表記をOKとするとのこと(表記方法等、一定のルールがあるようですが、現時点で不明)。これには、立ち位置によって、賛否両論あると思いますが、私は、良いとか悪いとかではなく、これが業界大変革の一歩になり得るのではと考えています。



● 仲介手数料とは


まずそもそものお話。マイホームを購入するにあたり、仲介業者を介して購入した際にかかるのが仲介手数料です。そしてその上限額は宅建業法により規定されているのですが、たとえば3,000万円の居住用不動産を購入した際にかかる仲介手数料は以下のとおりです。


 3,000万円×3%+6万円=96万円(税別)


消費税込みだと105.6万円となります。この費用が不動産購入時にかかることになります。



● 不動産購入時の諸経費


不動産を購入する際、前記仲介手数料以外にも必要となるものがあります。


 □ 収入印紙代

 □ 登記費用(保存・所有権移転)

 □ 火災保険料

 □ 不動産取得税


購入にあたり、住宅ローンを利用される場合は、


 □ 収入印紙代 ※1

 □ 融資保証料 ※2

 □ 融資事務手数料

 □ 登記費用(抵当権設定)

 

 ※1 電子契約の場合は不要

 ※2 融資事務手数料型を選択の場合は不要の場合が多い


これらが必要となります。不動産の営業は、お客様が不動産のご内覧をされる際に、大抵は【資金計画書(案)】なるものを持参し、お客様にご説明します。その資金計画書には、本体価格のみならず、上記の各種費用(概算)が記載されており、当該物件を購入するのにかかる総額を提示してくれます。


ここで認識を誤ってはいけないのは、不動産会社が提示する資金計画書だからと言って、そのすべてがその不動産会社の利益になるということではありません。


たとえば、収入印紙代。これは印紙税法に基づくいわば税金であり、不動産会社の利益にはなりません。登記費用は、登録免許税と司法書士の報酬が主な構成要素ですが、前者は読んで字の如く税金。後者は、司法書士の利益であり、不動産会社の利益ではありません。


火災保険料は、火災保険会社に支払うので、不動産会社の利益ではありません(その不動産会社が保険代理店となっていれば一定の収入あり)。不動産取得税もその名のとおり税金。住宅ローン利用の場合にかかる費用は、収入印紙代と抵当権設定にかかる登録免許税は税金で、その他は、住宅ローンの借入を行う金融機関に支払うものなので、不動産会社の利益ではありません。


余談ですが、不動産会社によっては【住宅ローン斡旋手数料】みたいな項目で、買主様より10万円前後(会社による)を請求するケースがあるようです。会社の考え方は様々だし、買主様の融資付けに、10万円では足りないくらいの業務量がかかる場合もあるとは思いますが、個人的にこのような名目の請求をする会社は信用しません。あくまで個人の見解ですが、弊社ではそのようなグレーな請求はありませんのでご安心を…



● 不動産会社の利益は仲介手数料のみ


記載が長くなりましたが、何が言いたいのかと言うと、(不動産仲介における直接的な※)不動産会社の利益の源泉は、仲介手数料しかないということです。そして、その仲介手数料は前記のとおり【上限が】宅建業法により定められています。あくまで、上限であるため、この額の範囲内であれば、不動産会社は自由に設定して、お客様に提示していい訳です。


不動産会社目線で見れば、他社より仲介手数料を安くすることは、数ある不動産会社のなかから、お客様に自社をチョイスいただくための戦術の一環。決して安くはない仲介手数料。不動産を購入されるお客様目線で見れば、その額が安いに越したことはありません。今後はそのような情報が、マイホーム探しの定番サイトであるSUUMOにおいても提供される訳ですから、嬉しい限りですよね。


でも、安かろう悪かろうになったら本末転倒。安くはない仲介手数料ではあるものの、目先の安さに飛びついて失敗…なんてことも往々にしてあります。賃貸であればダメージは少ないかもしれませんが、不動産の購入となると、嫌だからすぐに引っ越しという訳にもいきません。後悔先に立たず。不動産は高額ですから、経済的にも精神的にも大きなダメージを喰らう可能性もあります。そこは気を付けないといけませんね。


※ 上述した火災保険料の代理店収入および当該不動産会社が自社でリフォーム対応可能な場合のリフォーム費用収入等は間接的な利益と位置づけ。



● 業界に変化はあるのか


さて、前置きが大変長くなりましたが、ここからが本題。


不動産購入を検討され、物件探しをされている方がたくさん利用されているSUUMOに、【仲介手数料無料】を謳えるようになったらどのような変化、影響があるのか、個人的に考えてみました。ただ、これはあくまで私個人の見解ですのであしからず。



① 仲介手数料の認知度上昇


営業をしていて思うのは、不動産の購入をするにあたり、上述したような諸経費がかかることを【知らない】お客様も多いということ。簡単に言えば、3,000万円で販売中の物件を3,000万円で購入できると思っている方が一定数いらっしゃるということです。


ただ、今後は、そのようなお客様が減少するのではないでしょうか。


おそらく、SUUMOで仲介手数料無料という記載が解禁されると、たくさんの不動産会社が、無料記載をすると思います。SUUMOのような大手ポータルサイトに、「弊社で購入いただければ仲介手数料無料です」という類の記載が蔓延すれば、否が応でも、不動産購入検討中のお客様の目に留まり「仲介手数料とはなんぞや?」→「(3,000万円の物件を買うのに)100万円くらいかかるのかー」→「おー。この会社は無料って書いてある。問合せしよ」となるんじゃないかな。


で、不動産購入検討者さんのなかでは、いつしか、【仲介手数料は低く抑えられるもの】というマインドとなる。SUUMOへの仲介手数料無料記載解禁は、このマインドのきっかけとなる可能性が高いと考えます。



② 仲介手数料率【減】による囲い込み再燃の懸念


物件探しを行っていると気付くと思いますが、その情報元である不動産会社はやはり大手が多いですよね。ネームバリューや安心感から、不動産売却を大手に依頼される方は非常に多くいらっしゃいます。


売却の依頼を受けた営業の心の声とそれに対する私の評価を書きますね。


×「せっかく売却の依頼をもらったんだから、買主も自分で見つけて【両手】を狙おう。他社に決められたら【片手】になるから、紹介NGにしよ」


○「売却のご依頼ありがとうございます。情報発信を行って、自社客、他社客関係なく、いい買い手さんをみつけられるよう頑張ります」


◎「私を信用して売却を任せてくれたんだから、その思いに応えるためにも買い手さんは自分の手で見つけたい!そのためには、物件をちゃんとアピールして、よりたくさんの引き合いを得られるように頑張ろう。他社さんから紹介可否の連絡があったときにも、物件の特記事項をまとめたシートを作成しておいて、事前に渡すようにしよう。そうした方がより具体的に検討いただけるだろうし」


×はいわゆる【囲い込み】。売主様より自分、自社の利益を優先させています。○と◎は囲い込みはしなさそうな点においては共通してますが、異なるのは情熱。せっかく自分を信頼して売却を任せてくれた売主様に対しては、自分で買い手さんを見つけたいと思いませんか?度が過ぎると囲い込みとなるけど、この情熱のない営業は営業ではなく売主様から買主様に物件を引き継ぐただの【中継地点(≒作業員)】に過ぎないと私は思います。


囲い込み。少し前に問題になりました。以下、分かりやすい記事がありましたので、ご覧ください。



▼ 手数料率と囲い込みについての記事 ▼



仲介手数料は前記のとおり、売買の当事者様(売主様・買主様)からいただける上限が約3%。よって、両手取引となれば最大6%となります。この記事のとおり、売却の相談が多い大手は、その相談件数に比例して媒介件数も多く、両手になる可能性が高いので、取引1件あたりの料率が高くなっていることがわかります。


でも、前記①のように、仲介手数料無料マインドが蔓延すると、この料率が低くなるのではないかと考えます。片手取引が増える可能性が高いのがその理由です。


料率が下がると、取引1件当たりの収入が減ります。そうなると、会社の売上が下がるのはもちろんですが、不動産の営業は【実績に応じてインセンティブがある】人が多いので、それら営業の身入り(年収)が下がります。営業がこれを阻止するためには、囲い込みをするのが一番手っ取り早いですよね。


囲い込みは、専任であることを利用して、自社に直接問い合わせのあったお客様のみ対応することです。他社さん経由で物件紹介可否の連絡が入っても「その物件の担当者は今、席を外しています」とか言われて、逃げ続ける。おわかりのとおり、これは、売主様はもちろんのこと、物件を見たい買主様にとっても、売却、購入の機会損失を招く重大な信義則違反。不動産仲介に携わる者として、決してやってはいけない、恥ずべき行為です。この囲い込みが再燃するのではと懸念しています。


勘違いしてほしくないので、一応書いておきますが、これは大手不動産会社に限ったことではありません。手数料率と囲い込みについて分かりやすく書いていた記事を参考にしているだけで、囲い込みは、大手に限らず地場業者さんにだって存在します。この記事では、大手がやり玉に挙げられているだけなのでご注意を…



③ 仲介手数料収入減による不動産会社のサービスの低下


これは、不動産業界のみならず、どの業界においてもあり得ること。不動産会社がこれまで得ていた売上が下がる→でも、囲い込みはNG→売上を維持するためにはどうするか。


以下、考えらえる施策。


 ・売上が落ちた分、仲介成約件数を増やして、売上維持

 ・収入が落ちた分、コストをカットして利益率を維持


料率が下がり売上が落ちたけど、その分契約件数を増やして売上を維持しようというのは、理論上は成り立ちますが、競合ひしめく市場において、現実的に難しいですよね。逆に、コストカットは、自社のみで叶えられる策なので、これが一番手っ取り早い。


で、そのコストカットの最有力候補は広告費と人件費。これまで掲載していた物件販売のポータルサイトへの掲載は控える。これまで人をたくさん雇っていたが、費用対効果の悪いスタッフにはやめてもらう(やめるように仕向ける)。人がいなくなると、社員一人当たりの業務量が増えて、質の低下を招く恐れがあります。よって、量の面でも質の面でもサービス低下が懸念されます。


まだまだ他にも、枝葉の部分の変化はありそうですが、すごーく長くなるのでこの辺にしておきますね。


仲介手数料無料。私のような不動産業に従事する者からみれば、自分たちの首を自分たちで絞めている状態以外の何物でもないんですが、何もしなくても、いずれは訪れるだろう未来だから、今からその対策に向けた準備をしていくしかないですよね。


DX化、AI化が進めば前記①~③の問題なんてすべて解決される。仲介手数料が無料かどうかじゃなく、きっと仲介の概念すら吹き飛ばされるし、囲い込みはしたらダメ!なんていう人の良心とか関係なく、感情を持たない(不正しない)ロボに置き換えて囲い込みリスクも0かつ人件費も削減できる。GAFAが本気出せば、こんな変化をもたらすことなんか、一瞬よね笑



大変、大変長くなり、ここまでご覧いただきました方には感謝しかありません笑 半分忘れていましたが、今日のblogは購入編ということで、最後は烏滸がましくも私から、不動産購入について私からアドバイスを少々。


絶対に、購入の目的を見失わないようにしてください。


何のために買うのか。いつ買うのか。どんな物件がいいのか。


残念ながら仲介手数料を上限いっぱい払わないと買えない物件もあります。だからって、仲介手数料無料>いい物件って訳ではないですよね。いい物件が買えた上に、仲介手数料も少し抑えられた!ラッキーくらいな感覚じゃないと、本末転倒になる恐れがありますよ。


 ・マイホームを買って、子どもと長く暮らしたい。

 ・終の棲家になる家だから妥協したくない。


購入するには理由があります。

安けりゃ何でもいいやって訳じゃないですよね。


ではまた。



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