• Takayuki Tsuda

所有不動産への愛着



こんにちは、bucho です。


今日は、お客様とアポイントがあり、古賀市まで行ってきました。週末金曜日で、雨ということもあり、普段以上に車の量が多かった印象です。夕方から夜にかけて、また交通量が増える可能性がありますので、運転される際は、お気を付けくださいませ。



さて、本日の blog テーマは【所有不動産への愛着】です。


私が、不動産仲介の仕事をし始めて間もない、もう8年くらい前のお話になりますね。


とあるエリアで、アパートを所有されていた方の娘さんから、売却に関するご相談を受けました。そのアパートは、不動産会社に管理を頼んでおらず、賃料回収から物件清掃等の管理を新築時からお母様自ら行っていたとのこと。


お母様のご自宅からアパートまで、車で30分くらいの距離があり、これまではご自身の運転で現地まで週3回ほど行かれていたようですが、ご年齢が75歳くらいとなり、このままずっとそれを続けるのは難しいし、運転も心配で…というのが娘さんが売却を考え始めた理由でした。


ご相談いただいた当初、別の不動産会社にて売りに出されていたのですが、どう考えても、その価格では成約は見込めない設定でした。賃貸仲介をメインとしている会社に販売を依頼されていましたが、その会社さんは売買には慣れていなかったのか、私の提案価格の倍近くの価格で売り出されていました。


現に、販売を開始して、約半年が経過していましたが、これまでは引き合いどころか、1件のお問い合わせすら発生していないとのこと。


販売活動を行っていた会社さんが、販売開始前に持参していた価格査定資料を拝見し、設定のミスがあることを娘さんにご説明したうえで、当時、私が勤めていた会社の専任で、私が提案した価格に近いところで、販売を再開させていただきました。


それでもなかなか引き合いが得られませんでしたが、1ヵ月から1ヵ月半くらい経過した頃でしょうか。アパートを数軒所有されている方よりお問い合わせがあり、多少の価格交渉の末、無事、契約となりました。


ご相談をいただきました娘さんはもちろん、名義人であるお母様もお喜びになり、非常に良い形で、売買契約が締結となりました。



お引渡しは約2ヵ月後で、抵当権等の抹消もない売主様側は、買主様の資金準備を待つのみでしたが、売買契約から数週間が経過した頃に、娘さんより、1本の電話が私に入りました。


「母が、契約を解除したいと言っている」


お電話では、状況の把握が難しいと思った私は、娘さんとお会いしました。内容をお聞きすると、お母様が、売却契約をしたアパートを手放したくないと言い出したとのこと。やっぱり、新築時から30年弱、ご自身で管理をしていたため、相当な愛着があり、売買契約を締結したことを後悔しているとのことでした。


それでも、娘さんは、今ここで売却をすることが母のためだし、万一、相続するようなことがあったら、自身で管理もできないため、母を何とか説得します…とのこと。その時点では、手付解除期限まで10日くらいあったため、これから1週間経って、お母様のお考えが変わらないのであれば、売買契約解除の違約金が増額となる前に、手付解除を行うということで、娘さんとはお打合せを終えました。


その後、数日中に「母も納得してくれました」と、娘さんより連絡が入り、その晩、実際に娘さん、娘さんのご主人、お母様と私の4名でお話し合いの上、お引渡しの準備を進めることで合意しました。


そして、いざ、お引渡し当日。


お引渡しは、買主様指定の金融機関で午前10時からの予定でした。私と買主様は、約15分前の9時45分頃には到着し、振込伝票のご記入等、売買代金のお支払い、所有権移転に必要な手続きを先に行っておりましたが、10時になっても、売主であるお母様、娘さんは到着されません。


10分が過ぎた頃でしょうか。娘さんにお電話をしましたところ、渋滞しており、少し遅れますとのことでした。しかし、10時半になっても、11時になっても到着されません。心配になった私は再度、娘さんに電話しましたが、繋がりません。


買主様に何と説明しよう…と考えていた矢先、娘さんとお母様が到着されました。時間は定刻より1時間以上遅い、11時20分頃だったと記憶しています。


金融機関の応接室にお入りになり、買主様と対面の席につかれたお母様は、終始、下を向いて、顔をハンカチで覆っていました。司法書士が、所有権移転に関する説明をし、了承されたお母様は、泣いていました。


泣きながらも、売渡証書等の記名押印を終わらせ、所有権移転に必要となる書類も揃い、売買代金がお母様の口座に振り込まれたことを確認し、13時頃にお引渡しは完了しました。


▲ 写真はイメージです。本件とは関係ありません。



お母様の口座への着金が確認できるまでの30~40分の待ち時間に、お母様は、お持ちになられた紙袋の中から、鉢植えを取り出されて、買主様にお渡しされました。その鉢植えには、サボテンが6本あります。


「この6本のサボテンを、今の入居者だと思って、(買主様の)ご自宅でかわいがってあげてください」


このアパートは全8世帯で、現状2部屋が空室でした。週に3回程度、現地に行かれていたお母様は、入居者様とも面識があり仲が良く、アパートのみならず、これらの入居者様とのお別れが悲しく、その思いをサボテンに込め、買主様に託されたようです。お渡しする最中も、ずっと泣いておられました。


お母様はお引渡し後も泣いておられたため、娘さんに、また後日、ご自宅にお伺いする旨をお約束し、その場は終わりました。買主様はとてもいい方で、旧所有者となったお母様のアパートに対する愛着に感服されていて、「サボテン共々大切にします」というお言葉をいただくことができました。



お引渡し翌日、私は娘さんにお電話し、その日の午後にお会いしました。


お引渡し当日、時間に遅れたのは、娘さんが来るまでお母様のお住まいまで迎えに行ったところ、お引渡しに行きたくないということで、しばらく出て来なかったから、とのことでした。


また、お引渡しの約3日前に、売却するアパートの空室だったお部屋にお母様とともに宿泊し、別れを告げてきた、ということもお聞きしました。そのときも、お母様は泣いていて、ほとんど眠らなかったそうです。


最終的には、娘さんから「ご迷惑をおかけしました」、「本当にありがとうございました」というお言葉をいただき、このお取引きは終了しました。


▲ 写真はイメージです。本件とは関係ありません。



このお取引きが完了したとき、私はいろいろ考えさせられました。それは、今の私を形作っていると言ってもいいほどに。


まず、私の提案は間違っておらず、お取引き自体も、売主様にとっていいものだったと思っています。実際に、元々販売を行っていた会社さんは、査定を誤っていたし、私が担当してからも、当初1ヵ月は何の音沙汰もなく、その後、初めてお問い合わせがあった方が購入されたので、今回の買主様が現れなかったら、販売が長期化ないし、売るためには価格改定が必要だったかもしれない。


それでも、私の心には、モヤモヤが残りました。


娘さんやそのご家族は大変喜ばれている。お母様も売買契約がまとまったときは喜ばれていた。けど、それは、自身を心配するためにいろいろ動いていた娘さんに気を遣ってのものだったのではないか。本当は売りたくないのに、娘さんの気持ちを優先されたのではないか。いずれは手放さなくてはならないとわかっていても、所有・管理を始めてから約30年弱の愛着が押し寄せてきて、気持ちの整理がつかなかったのではないか。


このようなことが延々と頭をもたげてしまい、おそらくこれが、今回のお取引きで感じたモヤモヤの正体だと思っています。


ただ、不動産売却の仲介である私にできることは、依頼をいただいたことに誠実に向き合い、不動産売却について、売主様が抱く理想を限りなく現実に近づけることに他なりません。


そして、そこには、売主様にとって、何物にも代え難い【愛着】があるということを忘れずに、対応するということしか、私にはできません。


ご依頼をいただいた際には、全力を尽くす。売却するために、知識・経験面で力及ばないことがあれば、知っている人に頭を下げたり、恥をかいたりすることは、私にとってはたやすい御用。それが、売主様にとって、ベストな提案に繋がるのであれば。


私たちのような売買仲介営業にとっては、売り・買いを何度も経験していて、成約することが “正” のような考え方になることもあるかと思いますが、売買仲介営業を行っている方は、一度立ち止まって、ベストな提案を行うという原点と、今自分がやっていることに乖離がないか、改めて考えてみることも必要ではないでしょうか(特に若い人。勘違いしている人、散見されます)。


そのような提案、動きができる集団になることが、私たちメイヴスが掲げる売買仲介会社としての理想像です。弊社スタッフに、この思いを感じることがなければ、私が強く指導しますので、何なりとお申し付けください。


誠実さと謙虚さ、そしてフレッシュさを失わないように、今後も営業していきたいものです。思い出話…長くなりました…


ではまた。