• Takayuki Tsuda

一括査定サイト ~天国と地獄~



ネット全盛の現代は、例えば旅先で宿泊するホテルや食事をする飲食店の予約など、いろいろなものが、ネットで完結する便利な時代となりました。こと不動産においても、不動産購入検討者様からのお問い合わせはチラシ等の紙媒体からネットに移り変わり、ほとんどの不動産会社が、様々なポータルサイト(アッ○ホーム、○ーモ等)に物件情報を掲載し、購入検討者様からの反響を待つスタイルとなっています。では、不動産の売却相談はどうなってきたのかというと…、当然に来店相談や電話での相談などもありますが、ネットを活用した「一括査定サイト」というものが出てまいりました。


簡単に「一括査定サイト」を説明しますと、不動産所有者が、自身の不動産の情報を所定のフォーマットに入力すると、当該不動産が所在するエリアを取り扱い可能な不動産会社が表示され、価格査定を依頼したい会社(複数選択可)を選択。送信ボタンをポチると、選択した会社の営業担当者から電話、メールが届き、訪問査定or机上査定の依頼ができるというシステムです。売主様サイドからすれば、不動産会社に個別に連絡し、査定依頼する手間が省け、使い方によっては非常に便利なサイトと言えます。


しかし最近、売主様よりこのような相談が増えています。「一括査定サイトを利用して、所有不動産の机上査定(近隣の直近成約データをもとに、おおよその成約価格帯を割り出す、いわゆる簡易査定)を6社に依頼したところ、最高値と最低値で1,000万円以上の開きがある。なぜなのか?」というもの。


当然に、売主様からすれば、愛着のある不動産が、高値で成約するのはうれしいですよね。だから、上述のように、1,000万円以上もの開きが生まれた場合、最低値を出した不動産会社の営業さんよりも、最高値を提案してくれた会社の営業さんに訪問査定をお願いしたくなりますよね。訪問査定時にも「机上査定どおりの価格帯でいけますよ」と言われれば、やっぱりうれしい。この会社に、この営業さんに任せてみようと思うのが当然です。媒介契約を交わし、いざ売り出し。



天国バージョン

売り出しを開始して間もなく、内覧希望者が現れ、日程調整の上、内覧実施。売り出し価格どおりのいわゆる満額買付を受領。住宅ローンの利用はなく、現金購入!やった!契約日時を設定し、売買契約締結。1か月後、引渡しを終え、取引完了!「(不動産仲介営業の)□□さん、あなたのおかげで高値かつ早期に成約が叶いました!本当にありがとう!」。


めちゃくちゃ理想的な展開ですね。



地獄バージョン

担当の営業さんの提案どおりの価格で売り出して早1か月が経過したが、一向に内覧希望が入らない…。定期的に届く【営業活動報告書】(専属専任媒介、専任媒介契約の場合は、不動産会社には営業活動の報告義務があります)は、毎回同じ内容。これ絶対、前回の報告書のコピペだろ!と思いつつ、来るべき内覧に備えるべく、土日のスケジュールを空けて待機!…したものの、2か月経過…。もうすぐ媒介契約が満了日を迎えるのか。これまでは専任で1社に任せていたけど、机上査定時に高値を提示してくれた2番手、3番手に声かけて、一般媒介に変更しよう!と思っていた矢先、「内覧希望が入りました」と一本の電話が。内覧を実施し、購入の申込みをいただいたとの連絡あり。これから住宅ローンの事前審査に入りますとのこと。やった!長かったけど、決まった!うれしー!


… 1週間後。事前審査を出していた○○銀行より連絡がありましたが、借入希望金額に届かず、減額回答だったため、別の金融機関で再度、審査を行います。もうしばらくお待ちくださいとの連絡が営業さんより入る。こればっかりは仕方ないよな。待とう!


… 1週間後。「同じく減額回答でした…。フラット35ならいけるかと思いますので、こちらで審査にかけようと思います!もう少しお時間をください…。それと…、専任媒介契約が明日で満期を迎えます。審査中のお客さまのこともありますので、更新をお願いします」とのこと…。せっかく頑張ってくれているし、更新するか。→「更新ありがとうございます!また審査結果が出ましたらご連絡いたします」


… 1週間後。「フラット35もダメでした…。せっかくのお話だったのですが、購入者様もローンが通らないことで、購入意欲が萎えてしまい…、このお話は流れてしまいました…。また、これまで以上に広告活動を行い、内覧希望等、具体的な反響の取得に努めます!」


いやいやふざけないでよ。購入の申し出が入ってから1か月近くもローン審査に振り回され、なんなら、その間に媒介契約の更新までしてるんだけど。もう信用できない!「申し訳ないけど、一般に切り替えさせて」→「申し訳ありませんが、先日更新いただきましたので、専任期間は再来月の末までとなりますので、切り替えはできません」


は?じゃあまたこの営業さんに2か月も任せなくてはならないの?最悪!だるー!


… それから2か月。心機一転、専任は解き、一般媒介で計3社に依頼しよう。「以前、机上査定をお願いした○○だけど、一般媒介でお願いできないかな?」→「わかりました!ありがとうございます!」→後日、媒介契約締結を含めた面談。「大変申し上げにくいですが、これまで半年間、この価格で販売して売れなかった訳ですので、価格変更しないと厳しいですよ」→「じゃあ100万円下げようか」→「100万円じゃ反響は変わりません…。5%~10%下げないと厳しいですよ」→「じゃあ300万円下げるならどう?」→「いいと思います。でもせっかく価格も下げていただいたので、一般ではなく、弊社で専任契約でお願いできませんか?」→「いやー、専任はコリゴリなんだよ。ごめん。一般でよろしく」→「わかりました」。


(上記2番目の営業さん)一般かー。頑張ってお客さん紹介しても、他社で決まったら手数料にならないし、300万円下がったっていってもまだ高いから、適当にやるか。販売を開始してもう半年経過して売主さんも弱っているから、また時期をみて、専任への切り替え+値下げ交渉しよう。長期案件だな。


1か月後…。「1か月頑張りましたが、反響がまったく得られません。価格を変更しましょう」→「そうだよね。でも、前300万円下げたから今回は100万円で様子をみたい」→「わかりました。ちなみに、やはり専任への切り替えはお厳しいでしょうか?」→「前言ったとおり、専任は嫌なんだよ、ごめん」→「わかりました!頑張ります!」


(営業さんの心のうち)ちっ。100万円じゃなにも変わらないよ…。専任にもならないし。こっちもしばらく様子見だな。


1か月後…。「また1か月頑張りましたが、反響がまったく得られません。価格を変更しましょう」→「そうだよね。でも、今回も100万円で」→「わかりました。ちなみに、やはり専任への切り替えはお厳しいでしょうか?」→「切り替えたら決まるの?決まるなら専任でもなんでも切り替えるよ」→「…わかりました。一般で頑張ります」


(営業さんの心のうち)まだまだ高いから決まるわけないよ。そもそも決まるなら専任って意味わからないよ。決まるなら一般だっていいんだから。もうおもりするのも疲れてきたなー。とりあえず、○○さんが弱るまで一般で預かっておくか。


(売主○○さん)なぜ決まらないんだ…。ちゃんと営業してんのかな。こんないい物件なのに…。気づけば、机上査定で出た最低値が目前じゃないか。高値で売れるといったから依頼したのに、営業力のない奴等だな。あーどうしよう。


… そこで、最低値を出した営業さんから電話が。


最低値営業「○○さん、販売状況はいかがですか?もしよければ、もう一度、ご提案させていただけないでしょうか?」→「(たまに内覧も発生するし(強がり)、ぼちぼちだよ。売り急いでもいないしね(強がり)。話を聞くだけならいいよ」→「ありがとうございます」


後日

最低値営業「以前私がお出しした価格は、このマンションの他のお部屋の直近の成約事例や近隣の類似物件、また、その当時、○○さんと同様に販売中の物件との比較をして算出したものです。ただ、当初売り出された価格は、この価格よりも1,000万円以上高かったから、あー、これは無理だろうなーと思っていました。一括査定は高値で査定する会社、営業がとても多いんですよ」→「なんで?」→「机上査定の場合は特に、高値を言わないと、その後の訪問査定に繋がらず、会えない可能性があるからですよ。売主様とすれば、高値提示をしてくれた営業と会いたくなるのは当然ですからね」→「まー確かに」→「媒介契約、特に専任契約を狙って高値提示をする営業もいますよ。その提示額には根拠も何もない。チャレンジ価格ですとか、まずは高値成約狙いましょう!とか言うだけ。そりゃ売主様からしたら、高く売れるに越したことはないですし、売買仲介業者からしても、高く売れる=仲介手数料が高くなるので、うれしいですよ。ただ、売れなければ、どちらにもメリットはありません。売るために大事なのは、価格以上に、誰が一番、売ってくれそうか、ということですよ」→「あなたに任せたら売れるの?」→「私が提示した価格には先程ご説明したとおり根拠があります。なので、こちらの提示価格で、専任3か月いただければ売る自信があります。専任には凝りていらっしゃるとは思いますが、ご検討ください」→「あなたが一番まともに感じるから、3か月任せてみるよ」→「ありがとうございます!精一杯頑張ります」


それから1週間後…。


専任に切り替えて間もなく、内覧希望者が現れ、日程調整の上、内覧実施。売り出し価格どおりのいわゆる満額買付を受領。住宅ローンの利用はなく、現金購入!やった!契約日時を設定し、売買契約締結。1か月後、引渡しを終え、取引完了!「(最低値営業)△△さん、あなたのおかげで高値かつ早期に成約が叶いました!本当にありがとう!」。完



お気づきになりましたでしょうか?これは既述の天国バージョンのリピートです。地獄バージョンは時間と手間とストレスを抱える結果でしたね。ただ、勘違いしていただきたくないので、念押しいたします。


 ● 高値で売れることは、売主様、不動産会社どちらにとってもうれしいこと

 ● 大事なのは、根拠のない提示額に惑わされず、売ってくれそうな営業を見つけること


価格査定をしてもらいながら、売主様が、各営業担当者を査定することが肝要です。

長文、乱筆、失礼しました。